
中国では2020年、花火・爆竹の販売および使用が全面的に禁止された。
現在、微博や微信朋友圈では、これがコロナウイルス発生の要因になったのではないか、と真しやかに囁かれている。
中国には爆竹に関して、こんな伝承がある。
「遥か昔、中国には“夕(xī)”と呼ばれる神獣が海の底深くに住んでいた。毎年12月30日になると、“夕”は深海から陸へ上がり、村の家畜や食料を食い荒らしたり、村に瘟疫(流行性の感染性疾患)をもたらした。その暴れようは、山々が鳴動し、地響きを立てるほどだった。
村人は“夕”が来る前に山へ逃れ、身を隠し、天帝に祈ることしかできなかった。村人を哀れんだ天帝は村人を救うため、“年(nián)”と呼ばれる神獣を遣わせることにした。
ある年の12月30日、村人は山へ向かう道中、行倒れている7、8歳くらいの子供に遭遇した。子供は濃い眉に大きな目をしていて、一見して外者だとわかった。
心ある女性が子供を抱き上げ、食物を恵んでやると、子供は『“夕”を撃退するために、できるだけ多くの竹を切って、夜までに家に持ち帰って下さい。そして、門前には呪文を書いた紅い紙を貼り、薪に火をつけ、夜が明けるまで消さないでおいて下さい』と言った。村人は半信半疑で子供の話を聞いていたが、子供の言う通りにした。
村人と子供は焚火で暖を取りながら、“夕”が現れるのを待った。日が沈み、辺りが暗くなると、“夕”が現れた。すると子供が『“夕”は私が引き付けておきますから、焚火に竹を投げ入れて下さい!』と叫んだ。
村人は必死になって、焚火の中に竹を放り込んだ。すると、間もなく竹の中の空気が膨張し、竹は一斉に大きな音を立てて割れはじめた。その刹那、子供は“夕”の角に突かれたが、門前に掲げられた紅い呪文が書かれた紙と、竹の爆発音、爆発時の閃光に恐れをなした“夕”は、逃げるようにして、海の方へ走り去って行った。子供は息を引き取る直前、自分の名前は“年”である、と言った。
それ以来、村人は毎年12月30日になると、門前に呪文を書いた紅い紙(对联)を掲げ、赤い蝋燭に火を灯し、爆竹を鳴らして“夕”を駆逐し、再び“年”が現れることを願った。このため、人々は大晦日を『除夕(除掉“夕”)』、正月を『迎年(迎接“年”)』と呼ぶようになった…。」