不眠症と針治療

休日になると、ここぞとばかりに「寝溜め」する人は、案外多いものです。しかし、「寝溜め」は日常的に積み上げられた体内時計(=体内リズム、生物時計、概日リズム、概日周期、サーカディアンリズム)を狂わせ、心身の機能そのものの働きを低下させると言われています。ゆえに、「寝溜め」は「寝駄目」に等しく、休日に寝すぎれば寝すぎるほど、平日の睡眠の質は低下し、「疲れてるのに眠れない」という悪循環に陥ってしまいます。
 
いわゆる体内時計とは、専門的には概日リズムと呼ばれ、地球上の生物が無意識に体内で構築・維持している、約24時間周期で繰り返されるバイオリズムの事です。つまり、覚醒、睡眠、摂食、ホルモン分泌などは本来、明暗周期(=地球の自転で起る日没による光環境の変化)や太陽エネルギーに由来する温度や湿度の変化、またはその他の自然的・人工的な環境変化によって、その安定したリズムが維持されています。ゆえに、本来は昼行性である人間は、日の出とともに起床し、日の入り後に就寝する、という生活がベストなのですが、体内時計は個々人で独自に形成される内因性リズムであるゆえ、朝型・夜型に関わらず、とにかくは一定の時間に起床・就寝し、食事などの時間も一定させることが肝要です。
 
一説では、体内時計は環境の変化に即応出来ると言われていますが、人類は誕生して以来ずっと、太陽の運行に依存して生活してきたのですから、日が昇っている間に作業し、日が沈んだら休む、という生活が人間にとって最も自然であり、健康的な生活です。実際、現代人の様々な不調が目立ち始めたのは、夜型社会が隆盛をみせるようになった頃からです(その他、家庭環境の変化や、食生活の変化なども関係しているでしょうが)。
 
睡眠の研究は古くから行われていますが、睡眠中にみる夢についても、睡眠そのものについても、未だに未解明な部分がほとんどです。誰が言い出したのか、「睡眠は6~8時間が理想である。」という話も、実際のところは科学的な根拠を欠いています。
 
本当に重要なのは①寝る時間帯、②睡眠の質、③毎日決まった時間に寝ること、であり、極端に言えば睡眠のゴールデンタイムと呼ばれる夜10時から深夜2時までの4時間睡眠であっても、その質が高ければ、十二分に活動出来ます。事実、現代でも、4時間睡眠で活躍している人は多くみられます(アインシュタインなどは例外)。
 
前述したように、多くの地球上の生物がそうであるように、やはり人間も、日の出とともに起きて活動し、日の入りととも体を休ませ床に就くことが自然であり、より健康に生きるための基本となります。例えば、徳川家康は「朝は六時に起床し、小座敷上段の漱(すすぎ)道具で洗面した。…紋服着用後、大奥の仏前で礼拝し、戻って月代(さかやき)・髦(ぼう)をそり、髪をゆった。御典医数名の健康診断ののち、八時頃に朝食をとった。午前中は経書講読(林家)、武術修練(柳生家)があり、正午に大奥にて昼食、終わって休息の間で政務にあたった。夕刻は余暇があれば謡曲・乗馬などを楽しみ、入浴して午後六時に夕食、以後若干の事務処理をおこなったという。午後九時には寝所に退いたが、秋冬の夜長には小姓を相手に碁・将棋を楽しんだ…。(『江戸時代図誌 第4巻 江戸一』、昭和50年、筑摩書房)」とされています。
 
確かに、現代社会は、「夜型人間」なくしては、成り立たない部分があります。私もかつては「夜型人間」でした。どうしても仕事の都合などで「朝型人間」になれぬ場合は、可能な限り、睡眠の時間帯を一定させることが重要です。また、可能であれば、夜10時から深夜2時までの間に、30分でも睡眠時間を設けることです。「夜型人間」の典型として、寝酒と称して睡眠前に飲酒をするパターンがありますが、睡眠直前の飲酒は避けた方が良いでしょう。飲酒した直後は血流が良くなり、リラックス出来ますが、その後急激に体が冷えたり、筋肉が硬化したり、肝臓に負担がかかるなどして、睡眠の質は自ずと低下してしまいます。寝起きが悪いなぁ、なんて人は要注意です。

ちなみに、うつや倦怠感に関係するセロトニンは、約90%が腸粘膜のクロム親和性細胞に存在します。したがって、赤身の魚や肉類、納豆などを食べて、必須アミノ酸であるトリプトファンを摂取し、セロトニンが生合成されるよう促すことも重要です。セロトニンは平滑筋を収縮させる作用があるため、腸管運動に重要な役割を果たしていますが、同時に伝達物質として錐体外路系に作用し、体温調節や睡眠、摂食抑制、攻撃行動、幻覚などに関与しているとされます。腸内環境をより良く保つため、ヨーグルトや納豆などの発酵食品も毎日摂取することが重要です。また、鍼灸治療を定期的に行うことで、全身の血流を改善し、自律神経やホルモンのバランスを整え、免疫機能を向上させ、ストレスや外的環境の変化に強い体を維持することが可能です。週4~6日程度、15~30分程度のウォーキングなどの軽い有酸素運動をすることで、全身の血流を改善し、症状を軽減させたり、予防することができます。ウォーキングや腹巻の装着以外にも、腹部を毎日ゆたぽんのようなホットパックで温めるのも良いでしょう。さらに、ヨーグルトや納豆などの発酵食品を食べて腸内環境を整え、免疫機能の向上とホルモンバランスの改善を図りましょう。
 
ちなみに、鍼治療をした後は、その当日からグッスリと眠れるようになる場合が多いようです。特に治療後数時間くらいで眠気のピークが訪れやすいです。なぜなら、鍼治療で筋肉がゆるみ(深部筋肉があたたまり)、血流が改善し、脳内麻薬(主にβ-エンドルフィン)が放出され、自律神経が安定してくるからです。長年にわたって睡眠薬を常用している場合は、不眠症が完治する可能性は半々ですが、睡眠薬やアルコールなどの常用がない軽度の不眠症であれば、鍼治療で完治する場合がほとんどです。つまり、罹患年数が短いほど、それまでの睡眠薬摂取量が少ないほど、肝臓や筋肉が侵されている割合が低いので、鍼治療の効果が現れやすいのです。

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