芒鍼と毫鍼の外観はほぼ同じだが、日本鍼灸界では明確な違いを説明できる鍼灸師は皆無に等しい。

 

芒鍼(マンジェン)は、古代九鍼を起源とする特製の長鍼で、3寸から8寸までの長さがある。臨床では一般的に5寸が多く使用されている。また、芒鍼は主に比較的筋肉や脂肪が厚い部位や、肥満者、同一経絡上または隣接する経絡の穴位への透刺に用いる。

 

毫鍼(ハオジェン)は、0.5寸から3寸までの長さがあり、臨床で最も多く使用されている鍼である。芒鍼に比べて操作難度および刺鍼リスクが低い。 また、毫鍼の鍼柄は主に4種ある。

 

 

1種目は環柄鍼(別名圈柄鍼)で、メッキ処理された針金を巻き付けてある。日本鍼灸界で一般的に認知されている「中国鍼」はこの環柄鍼である。

 

2種目は花柄鍼(別名盤龍鍼)で、2本の針金を巻き付けて盤龍状にしてある。多くはタングステン鋼を用いた火鍼に用いられ、持ち手が熱くならないように工夫されている。

 

3種目は平柄鍼(別名平頭鍼)で、いわば頭部が平らな環柄鍼である。主に韓国で使用されている型式で、現代では鍼管を組み合わせて用いることが多い。いわば、環柄鍼と管柄鍼のハイブリッド型で、非常に扱いやすい。

 

4種目は管柄鍼で、日本鍼灸界で普及しているカシメ式に似ているが、日本のそれに比べて鍼柄の直径が太く、カシメ方も異なり、アルミを強烈に面で圧着していることが多い。日本鍼のように点で圧着していないため、カシメ不良ですっぽ抜けることはほとんどない。

 

その他、日本メーカーが好む、プラスチック製の鍼柄もあるが、上部の重心が軽すぎて片手挿管時や大量刺鍼時にに扱いにくいことや、強度が弱いためか、中国ではほとんど普及していない。

 

ちなみに、「芒」はイネ科植物の穂にある細かい棘を指す。「毫」は“豪”の俗字で、細長い毛を指す。共に鍼体の形状が関係している。