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中国では10年以上前から、地下鉄や高铁(高速鉄道)などにおいても、乗車前の手荷物X線検査と金属探知機を用いたボディチェックが実施されている。いわゆる「安检(安全検査)」である。

もちろん、中国であるから、時折係員が立寝していたり、検査が杜撰(ずさん)だったりすることもあるが、安全検査が無いに等しい日本に比べると、大きな事件は未然に防がれているように思える。ちなみに、中国の地下鉄は、ほとんどの駅にホームドアが設置されているから、人身事故で電車が止まったり、遅延することは滅多にない。

しかし、最近の高铁では、他人の席に勝手に居座る「霸座」や、乗客が頭上に置いた荷物を狙う置引きが目立っている。「霸座」というのは「霸占别人座位」の略語だ。

日本の新幹線でもたまに、空いている指定席に勝手に座る乗客がいるけれど、座るべき乗客が来れば、通常は自主的に移動する。「霸座」の場合は、警察が来ても断固として席を譲らないもんだから、結果的にお縄を頂戴して2週間ほど拘留されたり、铁路黑名单(ブラックリスト)に登録されて、6か月間乗車券を買えなくなったりする。

高铁における置き引きは、乗客が寝たのを見計らって、頭上の棚に置いたバッグから現金を抜き取る手口だ。特に他の乗客から目につきにくい、車両最後部の席が狙われやすい。こういった犯罪は、犯罪者に寛容な日本においては、今後十分に起こり得るから、平和ボケした日本人は特に注意した方が宜しいと思われる。

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以前、杭州東駅から上海行きの高铁に乗った時、私が座るべき指定席に、農民らしきジジイが偉そうに座っていたことがあった(画像右列、後ろから3つ目の席に座っているジジイ)。私が「ここは俺の席だ」と強く言ったらスンナリ移動したけれど、頼んでもいないのに温められた席に、ジジイの温もりを感じながら、2時間近く座り続けるのは非常に不愉快だった。

でもまぁ、安全検査をしているせいか、高铁内で包丁を振り回したり、放火したりする輩は滅多にいないし、もしそういう輩が現れたとしても、中国人乗客が一丸(いちがん)となって袋叩きにする可能性が高いから、内気で控えめな日本人が多い新幹線よりも、キレたら危ない中国人が多い高铁の方が、何となく安心感はある。

そもそもは、安全検査を蔑(ないがし)ろにして、乗客の命よりも己の利潤を優先する鉄道会社の列車に乗らなければ良いだけの話なのだが、都会で生活していると、中々そういうわけにもいかない。そうであるならば、できる限りの対策を自分なりに考え、いざと言う時は自己防衛するしかない。

「日本の駅は中国に比べて狭いから、安全検査場を作るスペースがない」とか、「新幹線の運行ダイヤはタイトだから、安全検査なんてしていたら経済的損失が大きい」とか、「日本じゃ安全検査なんて現実的ではない」などと、一生懸命に騒いでいる人がいる。

しかし、安全検査に必要なスペースなんて、たかが知れている。新幹線のダイヤが過密すぎるならば、安全検査を優先して、運行本数を減らせば良いだけの話だ。新幹線と同等の移動手段には飛行機もあるわけで、新幹線であぶれた乗客は飛行機に乗れば宜しい。

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2016年上海にある龙阳路駅磁浮(マグレブ)乗り場改札の様子

上の画像は、上海磁浮(SMT、マグレブ)乗り場の安全検査場の様子だ。安全検査に要するスペースなんて、実際にはこんなもんだ。検査時間は、1人あたり10秒もかからないだろうと思う。

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ちなみに、磁浮というのは、Transrapidと呼ばれるドイツで開発された磁気浮上型列車のことで、SMT(Shanghai Maglev Train)は、1999年に開発されたTR08型がベースになっている。SMTの最高時速は431kmに達する。2016年に上海へ行った時、乗ってみた感じでは、カタパルトから押し出されたようなGと、経年劣化的なガタガタ感がスリリングだった。

とにかく、来年には東京オリンピックがあり、テロが懸念されているし、新幹線の改札だけでも、優先的に安全検査場を設置するべきだろうと思う。設置にあたり、予算やスペースの問題がネックになるならば、まずはハンディタイプの金属探知機を使えば良い。金属探知機による簡易検査であれば、1人あたりの検査は数秒で済むだろうし、改札の手前にスペースを確保すれば、新たに設備を新設せずとも可能なはずだ。

それだけでも、少なくとも刃物や銃器類による事件を、大幅に減らすことが可能になるだろう。どうのこうのと理由をつけて、何もしないよりは遥かにマシだ。最新のX線装置だってコンパクトだから、休憩所や売店を設置するスペースがあるならば、まずはそれらを撤去してでも、安全検査用の器具を最優先にして設置すりゃあ良い。

そういえば、天津駅の高铁の改札は、何故か金属探知機のゲートが2重になっていて、警察犬もいた。警官はライフルを持っていたし、犯罪者を近寄らせないような雰囲気が強かった。

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2018年時点で、日本の新幹線の路線総距離約2,800キロに対し、中国高速鉄道の路線総距離は29,000キロ超で、すでに日本の10倍以上長い。さらに、2018年までの総旅客数はのべ90億人超、1日あたりの運行本数は3970本超で、日本の新幹線の1日あたりの運行本数約370本に比べ、すでに10倍以上になっている。

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2011年、浙江省で発生した高速鉄道(动车)の衝突事故以来、営業速度350kmの列車は300kmに、250kmの列車は200kmに速度制限がかけれらていたが、高速鉄道の安全性が確認されたとのことで、2017年、复兴号(復興号)と名付けられた新型の高铁がデビューし、高速鉄道の営業速度は時速350kmに戻された。

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現在、北京ー上海間(約1318km)を走る复兴号の運行平均速度は、時速280kmだそうだ。中国は2020年までに、高速鉄道路線総距離を30,000キロ、2045年には45,000キロまで延長し、复兴号は900編成まで増やす計画らしい。

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2016年、上海虹桥駅の高速鉄道待合室の様子

 ちなみに中国では、大都市の各主要駅にある高速鉄道のホーム数は、1駅あたり30以上はザラで、常時30本以上の高速鉄道が乗り入れ可能となっている。それゆえベンチが設置された待合所は空港なみに広大で、むしろ金のかかるファストフード店はガラ空き、東京駅のように新幹線に乗車するまでの間、休憩する場所がなくて困る、ということは一切ない。