21.家が広い相、狭い相を論ず
↑地閣
・顔全体に比して地閣が狭い者は、必ず住んでいる家は狭い。この者が広い家に住んだ場合、必ず運が衰える。あるいは、生涯、家庭が落ち着かない。
・顔全体に比して地閣が広い者は、必ず住んでいる家が広い。だが、頬が垂れ、頤(おとがい、あご)の肉付きに締まりがないゆえに地閣が広いように観える者については、判断してはならない。
22.不敵(≒乱暴者)の相を論ず
・頭が後ろへ長く、顴骨が高くなくて鋭く、眼中に深みがあり、その奥に鋭さがある。鼻は相応に高い。以上のような場合は、必ず不敵の相である。大体において、不敵な者の眼は、一見すると和気があるようだが、よく観ると鋭さがあり、悪死の相のように観える。不敵な者には、円面(えんめん、=丸顔)、露眼(ろがん、=出目)、低鼻(ていび、=低い鼻)はない。ゆえに、円面、露眼で不敵に観えても、不敵ではない。みな短気で、思慮が浅く、愚かな人である。不敵の相は、横死(おうし)の相に似ている。よってこれを、怪破(かいは)の相と名付ける。この相を備える者は、聡明ではない。また、将たる人(≒人の上に立つ人)は、その徳によって不敵を観抜く。この事はまた、別である。
23.目上に背く相を論ず
・何かと眉が動く者。
・額に傷がある者。
・眉が異常に濃く、粗(あら)い者。
・額に凸凹など、角がある者。
・ひどい出目の者。
・鼻が仰向いている者。
・前歯(=中心の門歯)の左右にある歯(両端門歯、犬歯)が尖っている者。
*前歯の中心は己の表象で、その歯を守るように隣り合う歯を部下、目下と観る。また、前歯の中心を両親の表象とする観方もある。
・鼻が横に曲がっている者。
以上の内、一相でもある者は、必ず目上と意見が合わず、親族との交わりが悪い。また、頼りになる親族がおらず、家庭を崩壊させたり、実家を出る。何れにしても、目上に背く。
24.弟の相を論ず
・上停(=額)が狭い者。
・眉が硬い者。
・髪際が濃い者。
・顔一面がせせこましい者。
・耳の中の郭(かく)が出ている者。
*この観方では、耳を家の表象としている。つまり、耳の中の郭が出ている場合、「家から出る=家を継ぐ者でない」と観る。ゆえに、惣領(≒長男、家を継ぐ者)であっても耳の中の郭が出ていれば、家業を継がずに実家を離れる、と観る。また逆に、次男や三男であっても、耳の中の郭が出ていなければ、家業を継ぐ(≒親の面倒をみる)相が一つある事になる。
・頬がげっそりしている者。
以上の内、一相でもある者は、必ず弟である。この相は、心が忙(せわ)しい相でもある。惣領であったとしても、以上のような弟の相がある者は、家業を継がない。もし、家業を継げば、家庭を崩壊させたり、家産を損なう。また、目上に背く相がある者は、惣領であったとしても、家業を継がない。もし、家業を継げば、家庭を崩壊させたり、家産を損なう、と判断する。
25.親の家を継ぐ(≒家業を継ぐ)相を論ず
↑官禄
・官禄(=額中央)の肉付きが良い者。
・頬の肉付きが良い者。
・耳の中の郭が出ていない者。
以上の内、一相でもある者は、たとえ末っ子であったとしても、必ず親の家を継ぐ。もし、親の家を継がずとも、親族に頼られる存在となり、必ず惣領(=長男)と同様に扱われる。また、弟で親の家を相続する者は、必ず以上三相の内の一相を備えている。俗に「垂れ頬(たれほほ)」と言い、下停(≒顎)の肉がゆるんだがために、頬の肉付きが良いように観える者がいる。これは、真に肉付きが良いとは言えない。ゆえに、この人は晩年が悪く、妻子に縁が薄く、子供がいたとしても頼りにならない。
26.孤子(ひとりご、一人っ子)の相を論ず
惣領(=長男)にも弟にも観えない者は、必ず孤子である。
27.家を二軒持つ相を論ず
・地庫の後方の肉付きが縦に分離するように、筋(すじ)が頤(おとがい、あご)まで廻る者は、必ず二軒の家を守る人である。
28.普請(ふしん、≒土木建築工事)を好む相を論ず
↑駅馬、地庫、地閣
・地閣の辺りにほくろがある者は、普請を好む。下賤な者の場合は、家に縁が薄い。己の心が家に落ち着く、という事がない。
・駅馬が健やかで、何となく斐(あや)がある者は、普請を好む。
*斐…綾模様、文模様の事だと思われる。綾模様とは、斜め線が織り成す模様の事である。
・眉頭の毛が立っている者は、身の上(≒運命)がしっかりと定まらない。もし、身の上が定まっている者は、家庭内の締りが悪い。
29.養子の相を論ず
↑養子へ行く相。
・図の如く、両眉の間から鼻の中程までの内に、疱瘡(ほうそう、≒天然痘)の痕のような傷がある者は、必ず養子へ行く相である。痕の数が多い場合は判断しない。一つから4つまでは、判断する。
*疱瘡…痘瘡ウイルスによる感染症の事。発熱と皮膚および粘膜における水疱、膿疱が特徴である。1980年にはWHOが根絶宣言を発したが、バイオテロの可能性から、現在では1類感染症に指定されている。ちなみに、1類感染症とは、致死率が最も高い感染症を選集したものである。よく知られたインフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザを除く)は、5類感染症である。
・印堂の上が少し低い者は、養子に行った先では己の一存を通そうとする。
・養子の相があったとしても、短気の相や目上に背く相がある者は、養子に行くと万事が悪化し、家産(≒財産)を損なう。
・養子の相があるのに養子に行かない者は、片親に縁が薄く、縁が変わりやすい。あるいは、両親に縁が薄い。
30.妻縁・夫婦関係の吉凶の相を論ず
↑妻妾
↑印堂、奸門、妻妾
↑魚尾
・魚尾、妻妾、奸門の辺りにほくろか傷がある者。
・同様に、魚尾、妻妾、奸門の辺りの皮膚が荒れたようで、健全でない者。
・魚尾が落入っている者。
・同様に、魚尾が落入り、黒ずんでいる者。
・中指と無名指(むみょうし、=薬指)の間に隙間があるか、開いている者。
以上の内、一相でもある者は生涯、妻に満足出来ない。貴人であったとしても、必ず縁が変わる。もし、縁が変わらない時は、夫婦仲が悪く、口論が絶えない。妻を得た(=結婚した)頃から運気が悪くなる者がまれにいるが、みなこの類の相を備えている。しかし、この事を心得て慎む時は、かえって吉となる。また、以上の内、一相でもある者は生涯、身分が安定しない。だが、異人(↔凡人)や芸者の類においては、世に名を発する一相となる。貴人や高禄の人(≒金持ち)においては、妻縁のみについて判断する。
・妻妾宮の肉付きが豊かで整っているように観える者は、妻を得る頃から運気が良くなり、自ずと家業が栄えるようになる。また、必ず良い妻を得る。
↑「この間を三陰三陽と言う」
・三陰三陽(≒両目辺り)の間が整っていて障りがない者は、夫婦の仲が良く、縁が変わる(=離婚する)事もない。また、妻を得る頃から、だんだんと良くなってくる。
・三陰三陽の間が整っておらず、障りがある者は、悉(ことごと)く妻の縁が変わる。あるいは、生涯、妻と意見が合わない。
・三陰三陽に障りがあるにも関わらず縁が変わらない者は、妻を得る頃から運気が悪くなる。あるいは、口論が絶えない。
以上の事は、妻の災い(≒行動、因縁)によるものではない。全ては、己(=夫)の悪相によるものである。よって、己が慎む時は、かえって吉となる。総じて、貧賤の相がある者は、妻縁が変わる事が多い。慎むべし。
31.子孫の有無を論ず
・鼻が赤い者。
・眉が目よりも短い者。
・小鼻がないように観える者。
・無意識に手を差し出した時、小指が開く者。
以上の内、一相でもある者は、必ず子供に縁がない。あったとしても、頼りにならない。逆に、以上の相が一相もない者は、必ず子供に縁がある。もし、実子がないとしても養子を得て、子孫は長久となる。
*人中(にんちゅう、鼻の下の溝)がクッキリと出ていない女性は子供に縁が薄い、と観る。女性において、人中は膣の象形である。つまり、主に子宮に問題があり、子供に恵まれ難い、と観る。もし子供を授かったとしても、早くに離別したり、子供による災難で苦労する。
32.子孫に縁がない相の類を論ず
・頤(おとがい、あご)が細く、尖っている者。
・口が尖っている者。
・耳が柔らかい者。
・ひどい出目の者。
・喉の骨(=喉仏)が高く、尖っている者。
・鼻が異常に大きく、高く、肉付きが良過ぎる者。
・鼻が高く、肉付きが悪く、骨の形が露わになっている者。
・鼻が小さい者。
・眉が濃く、粗い者。
・鼻の下が、少女のように締りがない者。
・目の下の肉がゆるんでいる者。
・目の下が深く落入っている者。
・顔の正面は広いのに、横面が狭い者。
・害骨(えら)が高く張っていて、骨の形が露わになっている者。
・顔が小さい者。
・頭が小さい者。
・胴体が小さい者。
・腰が細く、尻が小さい者。
以上の内、一相でもある者は、必ず子供に縁が薄い。もし子供がいたとしても、女子である。しかし、運が良い人には、どうにかこうにか、男子が一人いる事もある。もし、子供が多くいる場合は、子供に関しての辛労が多く、頼りにならない。子孫は老年の福であり、親族の根源である。
33.惣領(=家の跡継ぎ)に女子がいる相を論ず
男で柔和に観える者は、必ず惣領に女子を授かる。また、この相は、涙もろく、根気が薄い相でもある。
34.人の頭(かしら)となる相、物を支配をする相を論ず
↑人中
人中(=鼻の下の溝)に気が集まっているように観え、口の締りが良い者は、必ず人の頭(かしら)となるか、物を支配する人である。あるいは、人の頭のように用いられる人である。
35.能弁(=話上手)の相を論ず
・眼中がさわやかで、上唇が薄く、口の締りが良い。また、しゃべる時に、まず口に気が集まるように観える。このような場合は必ず、能弁である。逆に、しゃべる時の様相が不安定なのだが、頭が動く者や、手振りがある者においては、能弁であるかのように見間違えやすい。これは俗に言う、口賢くしゃべる者であり、必ず虚言である。
*身振り手振りが大袈裟な者、声が上ずっている者、常に眼が驚いたように見える者なども、虚言を吐く、と観る。
・真に能弁な者は、その様相は清らかで、癖(くせ)がない。逆に不弁な者は、口を労する事がないゆえ、唇(≒上唇)が厚く、自ずと口の辺りが重いように観えるものである。
36.妻に厳しい相を論ず
目尻の筋が少し上がっている者は、妻に厳しい人である。逆に、目尻の筋が下がっている者は、必ず心激しい妻を得る。その妻は、常に夫を剋す(≒妨害する)。全ての物事に、指し出る女である。以上の相については、念入りに判断しなさい。
37.女に密夫(≒愛人)の難がある相を論ず
額から髪際の少し内側までの範囲にほくろがある者は、生涯の内に必ず密夫の難がある。あるいは、縁が変わる。だが、上分(≒優れている)の女においては、判断しない。
38.窮命(≒窮境)の相を論ず
歯が小さくて短く、白過ぎる者は、生涯の内に、食を乞うほどの流労(=流浪)がある。また、剣難に用心しなくてはならない。
39.近日中に大難が来る相を論ず
常に揃(そろ)っている眉が入り乱れ、集まらない時は、必ず近い内に大難が来る。あるいは、辛労が出て来る。
40.必ず水難がある相を論ず
鰒(ふぐ)の口の如く、歯肉の外側に息を含んだように口が膨れている者は、必ず水難がある。水死する人の口は多くの場合、そのように膨れている。よく考えて判断しなさい。
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