2016年夏、中国へ出向している友人に招かれて、初めて上海へ行った。
我的上海日记(漫游随想录)2016夏 of 東京つばめ鍼灸外伝
ついでに、LCCに乗ってみようということで、春秋航空のチケットをゲットし、カラフルなゴミ箱が設置してある茨城空港から、片道8000円で上海へ飛ぶことにした。
上海で最も楽しみにしていたのはマグレブ(磁浮)に乗ることだった。マグレブは2006年に開業したものの、用地買収がままならず、運行距離はたったの30kmだった。
マグレブはドイツで開発されたTR08がベースになっており、車体は磁力で浮上、無摩擦、無接触だから、既存の高速列車に比べて、耐久年数は長いと聞いていた。
しかし、実際に乗車してみると、10年以上経過した車体は明らかにガタがきているように感じられた。動力は未だ衰えが見えぬようで、発射後わずか数分で最高時速430kmに達したものの、内心では大丈夫かいなと不安になった。
通常の列車の線路の耐久年数は60年程度だが、マグレブの場合は80年程度だそうだ。何より、騒音が少なく、排気ガスも出ないのが一番のメリットであるが、消費電力や電磁波の問題が密かに取り沙汰されていたのは、日本のリニアモーターカーと同じだった。
中国ではマグレブの欠点として、停電時の減速性能の低さが指摘されている。
車輪のある乗り物は、タイヤのグリップ力や車輪、ブレーキパッドなどの摩擦抵抗で急減速することが可能になるわけだが、マグレブには車輪自体がないため、急制動しようにも、高速度運行による慣性の法則が強く影響して、止まるという点に関しては劣る。
そうは言っても、ドイツでは1980年代に、時速400kmを超える磁気浮上型の列車を開発しているのだからすごい。まだVWゴルフⅡが発売されて間もない頃の話だ。
TR08は設計上、時速500kmで走行可能らしいが、中国ではTR08の独自改良版で、時速600km超を目指しているそうだ。
ちなみに中国では現在、アメリカ人が考え出したハイパーループをパクったような「高速飞行列车」と呼ばれる次世代高速鉄道の研究を開始しており、最高時速1000kmから段階的に速度を上げ、最終的には時速4000kmでの運行を目指しているらしい。北京から武漢まではおおよそ1200km(青森市から岡山市くらい)だから、時速4000kmで走り続けることができたら、計算上は18分で北京から武漢に到着する。
半世紀前までは、中国国民の主な移動手段と言えば徒歩か自転車のみであったが、たった数十年でここまで発展したのは俄(にわ)かには信じがたい。鶴の一声で物事が進みやすくなるのは、独裁政権のメリットの1つだろう。飞铁と呼ばれる超级高铁が、実際にスーパーシティ同士をつなぎ合わせるのも、もはや時間の問題かもしれない。
中国で最も発展している都市と言えば、出稼ぎ労働者があふれていた深圳だけれども、現在の深圳は東京人がカッペに思えるくらい、激しく発展しているそうだ。まぁ、5Gによる超監視社会は恐ろしいけれど、どんな感じなのか実際に見てみたい。
中国は急速な発展を遂げる一方で、街中に未だ怪しい面影を残している。例えば、上海人民公園の地下にある某ショッピングモールには、新宿国際造型という怪しげな屋号の美容院があった。
最近はこのような美容院以外にも、日式(日本風のサービス)を提供するという触れ込みの店が数多存在するから、何だかんだで反日報道はあっても、日本好きな中国人は少なくないのだろうと思う。
ちなみに、この新宿国際造型では、日本式カラー(日式染发)は399元(約6,800円)、日本式パーマ(日式烫发)399元は(約6,800円)、シャンプーブロー(洗吹)は39元(約670円)と、中国の物価を鑑みれば相当に高額であった。実際、本当に日本式なのかどうかはわからない。
しかし、何故にこの美容院は、新宿という屋号を選んだのだろう。
そういえば、ある中国人が東京に住み始めて間もない頃、「新宿駅があるなら古宿駅もあるのか?」と言っていたが、やはり「新天地」と呼ばれるデパートに馴染みのある中国人にとって、「新」が付く地名はおニューな感じというか、イカす感じがするのかもしれない。
そんなことやあんなことを考えつつ、店頭右側の看板を見やると、明治人のようでよく見るとそうでもないような、職業不詳の日本人らしき中年カップルが描かれていることに気が付いた。髭男は左手に何か持っていたが、それが手裏剣なのか、藁人形なのか、ハサミなのか、私のIQでは判別がつかなかった。この絵のどのあたりが「しんじゅく」なのかは、全くもって理解不能であった。
そういえば、某駅の近くには、機関車トーマスをパクったような乗り物があったので、記念に写真を撮っておいた。