単回使用を条件として薬事法で承認された医療用具は、SUDs (Single-use medical devices)とも称され、添付文書には必ず「再使用禁止」と明記されている。
したがって、再使用した医療用具が原因となって医療事故が発生した場合は、使用者が薬事法違反または医療法違反となる可能性がある。
また、添付文書などで再使用禁止の旨を明示しているにも関わらず、使用者が添付文書に従わずに、その医療用具を再使用して事故を起こした場合は、その使用者に製造物責任が生じる可能性もある。
医療機関や鍼灸院などで再滅菌(再生処理)を施し、出荷時と同等の品質(EO処理した状態)を確保することは不可能に等しいとされている。
例えば、複数のパーツから構成される医療用具は、接合部に凹凸部があり、形状が複雑になるほど、確実な洗浄、滅菌は困難となる。
さらに、安定した滅菌水の確保、洗浄水の水質管理、発熱性物質の除去、コーティング材除去による機能の喪失、無菌性の実証、再生処理による材質の軟化や劣化、滅菌不良による感染リスクなど、様々な問題がある。
それゆえ、日本鍼灸界でも1990年代からSUDsが普及し始めて、現在販売されている鍼のほとんどはディスポ鍼になっている。
しかしながら、日本鍼灸界では未だ再使用可能鍼が流通している影響もあり、一部の鍼灸師は「キープ鍼」などと称して、単回使用指定されたディスポ鍼を何年も使い続けているケースが少なからず散見される。酷い実例を挙げれば、SUDsを複数回または明らかな破損がみられるまで数十回以上にわたり(場合によっては何年も)、再使用しているケースもある。
鍼は、医療機器分類においては最も細い医療用具であり、単回使用指定されているディスポ鍼を再滅菌して使い続けることは、細菌感染ばかりでなく、折鍼のリスクも極めて高い。たとえ、ステンレス鍼であっても、オートクレーブの高圧蒸気や洗浄薬剤などによって、材質強度の低下や腐食は容易に起こり得る。ステンレスは目視で破損や錆びがないように見えても、顕微鏡で拡大すると、その変性が露呈することがある。
そもそも、SUDsは医療や患者に対する安全確保のために開発されたものである。各鍼灸団体はSUDsの再使用によるリスクを学会や会報などを通じて周知させ、SUDsの再使用を推奨、常態化させている鍼灸師を厳格に取り締まるべきだが、未だに業界は旧態依然の様を呈している。
物価高の影響もあり、一部の鍼灸師においては、固定費のさらなる増加などを理由に、より頑なにディスポ鍼の再使用を止めようとしない状況が続いている。固定費が上がるのであれば、施術費に転嫁し、まずは安全な施術環境を優先的に確保すべきである。
しかしながら、私がこの業界に入った15年前と比べてみても、現況はほとんど変化がみられないように感じられる。
