偏頭痛(片頭痛)患者は国内に1,000万人以上存在すると言われている。偏頭痛の原因は血管の拡張以外にも、ストレスや睡眠障害、環境の変化などの影響で刺激を受けた三叉神経が、神経伝達物質の1つであるCGRPを放出し、脳血管周囲で炎症が起こることによって脳内の各神経がさらに興奮し、偏頭痛の慢性化という負のスパイラルに陥ると考えられている。
ちなみに、コーヒーやエナジードリンクの多飲によるカフェイン中毒で、動悸や精神的興奮、情動不安定、偏頭痛、皮膚の血色不良などがみられることがある。この場合は、カフェインの摂取量を減らさなければ、偏頭痛が慢性化したり、再発しやすい。
ここ15年ほどで、頭痛外来が一般的になり、現在でもトリプタン製剤などを主として処方されるケースが多くみられる。しかしながら、近年、頭痛専門医や脳外科専門医らによって、CGRP関連抗体薬のガルカネズマブやエレヌマブ、フレマネズマブが処方されるようになってきている。これはつまり、トリプタン製剤にあまり効果がみられなかった結果と言えるかもしれない。
薬局などで入手できる市販薬は、主に非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンが多い。だが、実際には効果が見られなかったり、完治しないケースが多く、逆に長期間の使用による副作用の影響で、頭痛が固定化したり、発生頻度の増加、症状の増悪などがみられることがある。
そもそも、薬の基本的な効能は身体が本来備えている機能の「代償」であり、薬物投与は長期間になればなるほど、薬の作用によって、身体本来の生理的機能が奪われてしまう可能性が高まる。つまり、薬効が高ければ高いほど、副作用のリスクも高まり、身体の機能が低下するようになる。
軟部組織は炎症が長期に渡ったり、炎症を繰り返すことによって、炎症が「クセ」になるという性質がある。炎症を火事に例えれば、度重なる炎症は、身体各所で火がくすぶっているようなものであり、適切に処置しなければ、大火事となり、軟部組織の不可逆的な変化を招いたり、難治な炎症性疾患を引き起こしたり、最終的に炎症の成れ果てである組織の癌化に至る可能性が高まる。
したがって、早期の薬物療法が必要となることもあるが、結局は、脳血管周囲の炎症の根因を突き止めなければ、薬物投与は単なる対症療法としてしか機能せず、偏頭痛は完治しないばかりか、薬物乱用による副作用で更なる悪化の一途を辿ることになる。
また、メディアへの露出が多い頭痛外来やら、頭痛専門を謳う鍼灸院や整体院、カイロプラクティック院などへ大枚はたいて通院したものの、偏頭痛などの慢性頭痛が未だ完治していない、というジプシー患者は数知れない。
慢性頭痛の多くは側頭部や頸部、顎関節周囲の軟部組織の癒着が原因であることが多い。したがって、慢性頭痛が起きた時は、冷してはいけない。冷やすと患部の癒着や組織変性を加速させたり、症状が固定化し、頭痛が悪化する可能性がある。また、天候の悪化や低気圧の影響などによって、偏頭痛が悪化するケースもみられるが、基本的には頸部や顎周囲の筋緊張や軟部組織の癒着範囲が減少すれば、気候変動による症状の悪化は起こりにくくなる。
現状では、慢性頭痛を完治または大幅に改善させる方法は、当院のような刺鍼法しかない、と考えている。なぜなら、頭痛外来や著名な頭痛専門を謳う療術系を散々巡り歩いたり、様々な薬物療法を試してきて、微塵も改善しないばかりか、悪化の一途をたどり、頭痛は一生付き合ってゆくものであると絶望の淵に立たされているような患者の多くが、当院の鍼施術で完治または大幅に改善しているからである。
慢性頭痛には数種のパターンがみられるが、後頭部から前頭部にかけて痛むタイプは頸部筋群の癒着が原因であることが多い。また、側頭筋の後部が痛む場合も同様である。
側頭部が拍動するように痛む場合は、顎関節周囲の筋群の癒着が原因であることが多い。また、特に側頭筋の片側だけが痛んだり、前斜角筋や胸鎖乳突筋のコリや張り、三角筋周囲や前腕へのしびれや痛みが左右どちらかに顕著にみられるタイプは、顎関節の症状(クリック音や開口障害、食いしばり、歯ぎしり、睡眠障害など)を併発しているか、自覚症状がなくても精神的ストレスによる内外翼突筋の慢性的な緊張に起因する萎縮や癒着で、下顎骨が側方へ移動していることが多い。この場合、患者の正面に座り、患者と会話すると、口の開閉時に下顎骨のズレを観察できる。
下顎骨のズレは、内外翼突筋へ適切に刺鍼すれば、自然と矯正されやすくなる。顎関節がズレたり、クリック音が発生する根源的な原因は、顎関節を構成する筋群の癒着であることが多いから、単なる手技のみで矯正しようにも無理がある。むしろ、硬く固着した筋群を無理矢理引っ張ったり、動かしてしまえば、筋肉や腱、骨部を損傷したり、さらなる異常を来す可能性がある。
慢性頭痛や顎関節症に対するアプローチとして、ボトックス注射もあるが、基本的には効果は一時的であったり、全く効果が見られない、という患者が少なくない。
当院では、慢性頭痛に関しては1-3回の施術で大幅に改善するか、完治するケースが多い。精神的ストレス過多により、顎関節症を発症していたり、極度の緊張状態にあったり、上半身ののぼせや、頸肩こりが慢性的に強い場合は、5-7日おきに施術し、ある程度症状が軽減してきたら、10-14日おきに施術すると良い。生活環境が極端に悪い場合は、定期的なメンテナンスとして、頸部や上背部、顎関節周囲へ刺鍼する必要があるが、鍼治療を始める前の状態に比べれば、QOLはかなり改善するようになる。
刺鍼時は多少の痛みを伴うが、15-25分間程度の施術に耐え、数回の治療を継続することができれば、術後のQOLは各段に向上するため、「頭痛薬を飲まなくて良くなった。本当にこの鍼治療に出逢えて良かった」と感謝されることが珍しくない。