中国には様々な薬用茶があるが、婦人科疾患や貧血に有効な薬用茶として、「五紅湯(五红汤、五红水)」が知られている。「紅(ホン)」は中国語で赤を意味し、赤色の食材を5種類用いるため、「五紅湯(ウーホンタン)」と名付けられている。「湯(タン)」は煮汁の意味で、煎じ薬には大抵「湯」がついている。
五紅湯の材料はクコの実 (枸杞子) 、ナツメ(红枣)、アズキ (红豆)、ピーナッツ (红皮花生)、きび砂糖 (红糖) である。ピーナッツは赤い渋皮が付いたまま用いる。砂糖は精製方法や原料によって名称が異なり、中国ではきび砂糖のことを「红糖(紅糖)」、黒砂糖のことを「黑糖(黒糖)」と称している。きび砂糖も黒糖も、原料はサトウキビだが、黒糖は精製していないため、きび砂糖よりも色が濃い。
黒糖はカリウムやカルシウム、マグネシウムなどのミネラルが、きび砂糖の1.5~2倍含まれており、糖分が高いため、体力消耗者への短期的な摂取は良いが、常用は避けた方が良い。特に、糖尿病患者においては、厳格な摂取制限が必要になる。
一方、きび砂糖は精製されており、黒糖に比べて、作用がマイルドなため、常飲に適している。そのため、頻繁に摂取する処方には、きび砂糖が用いられることが多い。
ちなみに、きび砂糖は湿気を吸収しやすいため、密封して冷暗所に保管する。黒糖はきび砂糖に比べて水分量が多く、発酵してカビが生えやすいため、冷蔵庫で保管し、早めに使い切る。
中国では、抗がん治療を受けている患者に対する民間療法として、ナツメと小豆を入れた粥を食べる方法も知られている。
【五紅湯の作用】
補気養血、補肝腎、白血球および血小板生成促進、造血、免疫機能の賦活
【五紅湯の適応症】
貧血、気虚、血虚、化学療法による白血球数減少、血小板減少、産後の体力低下、免疫機能の異常
【五紅湯の材料(1日分)】
ナツメ5個、クコの実20粒、アズキ20粒、ピーナッツ20粒、きび糖大さじ2杯、水400-500ml
※黄蓍を加える処方もあるが、便秘やのぼせ体質のある患者には、黄蓍は用いない。
【五紅湯の作り方】
1. 土瓶またはホーロー鍋、ステンレス製の鍋に水と上記材料をすべて入れる。
2. 水が沸騰したら、弱火にして煮る。
3. 20-30分間経ったら火を止めて、材料の生薬を取り出す。
【服用方法】
上記の方法で作った五紅湯は1日2回、朝晩に分けて飲用する。
※飲用後に体調不良など異常がみられた場合はすぐに中止する。
【各生薬の主な効用】
・ナツメ:養心脾、潤燥
※生姜や甘草を調合すると、補気の効果が高まる。
・クコの実:補腎明目、悪玉コレステロール低下、抗酸化
※18種類のアミノ酸を含む(必須アミノ酸を含む)
・ピーナッツ:止血(特に渋皮)、貧血予防、降圧
・きび砂糖:活血暖胃、産後の補血