八王子中央診療所所長、小児科医の山田真氏が書いた『はじめてであう 小児科の本(福音館書店)』という本を読んだ。小児科関係の医学書はいくつか読んでいるが、これはとても良い本だと思う。最近、第三版が出たので、早速最新版をアマゾンで注文した。予防接種に関しての内容が加筆されたようだ。

題名からすると小児科に限った内容に思えるが、医療全般について記されているから、成人を診ているような医療者にとっても有益な内容であると思う。すでに子供がいる人も、これから子供を授かるであろう人も、この本は是非とも一読して、手元に備えておかれるのが良いと思う。

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基本的に医者が書く本も、鍼灸師が書く本も、思想や知識が偏っていることが多くて読むに堪えぬ内容が多いが、山田氏のスタンスは中医、西医に関しても比較的バランスが取れていて、嫌味も偏向もなく、文体も柔らくて非常に読みやすい。

やはり文章というモノは当人のアタマが透けて見えるようなモノで、その人の書いた文章を数行読んだだけでアタマの程度が知れてしまうから恐ろしい。私も恥ずかしげなくブログなどやっているわけだが、これはあくまでも独り言だから優劣などはどうでも良いし、批判されようが気にしない。

昔から日本では小児鍼一筋でやっている鍼灸師が少なからず存在するわけだけれど、私は以前から小児鍼だけに特化した鍼灸院に対して、何だか腑に落ちない嫌な感じの思い(軽蔑感みたいな)をずっと持っていたのであるが、今回この本を読んで、自分と同じような感覚を持つ医師がいるんだなと、ちょっとスッキリした。

山田氏の考え方に完全に賛同するわけではないけれど、少なくとも他の医者や鍼灸師が言う論よりも的を射た正論だと思うので、ちょっとその文章を引用させて頂きたいと思う。ちなみに美容鍼に対しても、同様のことが言えると思う。

『わたしは実のところ、小児針はしていません。小児針がよいとされているような「病気」はおおむね、経過をみていれば自然によくなるものであったり、心理的なものが原因になっているので針以外にもっと適当な治療法があったり、からだの鍛錬の方が針よりもずっと根本的な治療法であったりと、そんな種類のものであるからです。わざわざ針灸治療に通わせるだけのメリットがあるのかどうか、わたしにははっきりわからないのです。(『はじめてであう小児科の本』山田真/2002年/福音館書店)』

日常的にみられる小児の病態の多くが心因性のものであることは医学的にも常識であるとは思うが、医学を掻い摘んだだけの似非医学しか学んでいない鍼灸師や、無知な親にとっては、小児針は無くてはならない存在なのかもしれない。

確かに私も希望があれば小児に針治療を施すことはあるが、基本的に子供の病気というものは家庭における環境因子が根因となっているパターンが多い(多くの場合、親に問題がある)から、針をやりたければローラー針などを買ってもらって、親自身に施術してもらうよう勧めている。鍼灸師の出番が必要になるのは小児麻痺のリハビリであったり、脳神経系統の病態くらいであろうと思う。

そもそも、小児は精神構造が未熟であるため、心理的反応が身体症状として現れやすい(ちなみに、成人していても幼児性が強く残っている場合は、難治性の病態が発現しやすい)。そういう至極常識的なことを知っていれば、子供を無暗やたらに病院へ連れて行って検査したり、投薬したり、針をしたりすることはないだろうと思う。

しかし、小児針を生業としている鍼灸師からしてみれば、子供が定期的に通ってくれなければ鍼灸院が立ち行かなくなるわけで、「子供の健康維持には鍼灸が必要です」なんていう方便が必要になってしまうのかもしれない。日本ではそういった鍼灸師が教壇に立っていたりするもんだから、どうにかしようにも多勢に無勢で、中々難しいものがある。