南北相法早引

浪花 水野南北居士著
南都門人 半田周造挍

1.忠孝五常の相を論ず 

・眉が高く、眉の長さが目より長く、眉の毛並みが豊かかつ左右均等で、眉毛に潤いがある者は、必ず仁(じん)がある。

・眼が大きくなく、長く豊かで正しく、清く、自然と神気があるように観える者は、必ず義(ぎ)がある。

・鼻が豊かで、肉付きが良く、形が正直(せいちょく)で、鼻先に丸みがある者は、必ず礼(れい)がある。

・耳が小さくなく、薄くなく、形が正しく、豊かで清く観え、上に伸びるように観える者は、智(ち)がある。

・口の形が正しく、締りが良く、歯並びが等しく、歯が程良く長く、下が豊かに観える者は、必ず信(しん)がある。

以上の礼と義の相が有る場合、忠心の相であるとする。また、礼と信の相がある場合、孝心の相であるとする。

・眉、眼、耳、口、鼻の相が相応に完全である者は、相応の五常がある。

・眉、眼、耳、口、鼻の何れも不正な者は、必ず忠孝五常がない。これを不実の相と言う。面(おもて)は良く見えたとしても、必ず獣心(じゅうしん)に等しい。

2.上分の相(優れている相)を論ず

↑図A「この間を三停と言う。」「この印を六府と言う」

面(おもて、=顔面)が豊かで、皮膚が厚く、肉付きが締まっており、三停六府(さんていろっぷ、図A参照)が豊かで長短がなく、眼、耳、鼻は共に豊かで正しく、眉のあたりの肉付きが高く、眉は目より長く、人中(=鼻の下の溝)が豊かで、口は開いておらず、声は臍下丹田から出ていて自然と清く、歩行が正しく自然と静かに歩く。これらの相が全てそろっている時は、必ず上分の人である。また、貴人、高位の人、威相の人、徳のある人においても、これらの相がある。
*威相を備えていても、声に清らかさがなく濁りがある時は、陰の威相であり、悪相である。陰の威相は、悪徳政治屋や悪銭を稼ぐ亡者に多い相である。

3.貴人(きにん、きじん)の相を論ず

前述した上分の相があり、耳が顴骨(けんこつ、=頬骨)の後ろへ引き上るようであり、鼻は正しく上停(=額)まで貫くようである。このような場合は、必ず貴人である。もし、売人(≒商人)にこの相がある時は、必ず破産する。
*貴人の相は気位が高い相であり、鼻が程よく鋭くそそり立っているのが特徴である。文中では、気位の高い相であるがゆえ、「商人は破産する」と言っているのである。つまり、気位が高いと「殿様商売」になるからである。顔に比して鼻が大きく胡坐をかいているのは、お高く留まっている上に、我(=自己主張)が強く、男を剋す(=圧する)相である。よって、家庭に納まる事が出来ず、後家相である、とも観る。さらに、鼻先が尖っている者は性格に「棘(とげ)」があるため、毒々しい言葉を平気で吐き、親しみ難い性格である(「ひと癖」あるタイプ)。逆に、鼻先に丸みがある者は、心にも丸みがあり、必ず和気があるので、初対面でも親しみやすく、学校や職場などでも人気が出やすい。ちなみに、鼻は顔(≒自分を取り巻く世界)の中心にあるため、己(おのれ、=自分)を表し、自己主張の強さも観る。したがって、前述したように、顔に比して鼻が大き過ぎる者は自己中心的である、と観るのである。

4.官位の相を論ず

↑「日角と言う」「月角と言う」「官禄(録)と言う」

前述した上分の相があり、眼が清く、神気があり、耳と顴骨は天に昇るようであり、龍骨を現わしている。また、鼻は豊かで天停(=上停)に貫き、官禄の骨は玉のように隆起していて、肉付きが豊かである。さらに、日角・月角が豊かに隆起し、肉付き豊かに保たれている。この場合の官禄・日角・月角の三つを合わせて、三光の骨、と言う。以上のような相がある時は、必ず官位の人である、と判断する。もし、売人(=商人)にこの相がある時は、必ず破産し、流浪する。

5.威勢ある相を論ず

↑「この左右の筋を法令と言う」

前述した上分の相があり、顴骨が目の際から高く上に引き付き、小鼻が怒り、法令線が広く後面へ流れ、眼は豊かで長く、深く、神(しん、≒神気)がある。以上の相がある場合は、必ず威勢のある人である。もし、売人(=商人)にこの相がある時は、家庭を崩壊させ(≒破産させ、家を断絶させ)、後には梟木の刑に遭う。
*梟木(きょうぼく)の刑…梟首(さらしくび、=晒首)の事。竿首(かんしゅ)、獄門。処刑した罪人の首を木にかけてさらす刑の事。「梟(ふくろう)は不幸の鳥なので、これをさらし首にし、五月五日にそのスープを作り、みせしめに役人に飲ませたと言われる。(『漢語林』/大修館書店)」。

6.有徳(ゆうとく)の相を論ず

前述した上分の相があり、鼻が豊かで天停(てんてい、=額)へ貫くようであり、準頭(せっとう、=鼻先)が豊かで丸く、土星(どせい、=鼻)は十方によく通じ(≒広がり)、四岳(しがく、=額、右頬、左頬、顎)は中央(=鼻)を守っているように観える。以上のような相があれば、必ず徳のある人である。もし、平民にこの相があっても、下手におごり高ぶる事がない時は、吉である。以上に述べた「土星が十方に通じ、四岳が中央を守る。」とは、額、頤(おとがい、あご)、両顴骨を四岳とし、四岳が鼻によく随い、通じるように見える事を言う。鼻もまた一面(=顔全体)によく通じ、例えるならば、君臣の如く通じ合っている事を言う。鼻を君(=君主)とし、一面を臣(=臣下)とする。

7.道徳の相を論ず

・上分の相があり、鼻が豊かで小鼻が怒り、準頭(せっとう、=鼻先)が丸く、顴骨が目の下から高く上に向かって引き付いている。また、胴体が大きく豊かで、臍は上に付いているように観える。このような相がある場合は、必ず道徳の人(≒善悪正邪を知る人)である。

・前述した道徳の相があって、鼻が天停(=額)へ貫く人は、その徳が天(≒君主、上司)に通じる。

・道徳の相があったとしても、鼻が天停へ貫いていない人は、その徳は天には通じない。しかし、中分(≒中位の身分、中位の上司)にはよく通じる。

8.発達のある相(発展する相)を論ず

・眉が豊かで、左右等しく整っていて、眉が目より長い者。

・眼が豊かで長く、眼中が正しく、眼がぼんやりしていない者。

・耳が豊かで、肉付きが厚く清く、高く上に付いている者。

・鼻が豊かで、肉付きが良く、形が正しく、長いように観える者。

・口が豊かで正しく、締りが良く、歯をあらわにしていない者。

以上の相が一つある者は、必ず生涯の内に相応の立身出世があるか、人の頭(かしら)となる。また、以上の相が二つ、三つある者も相応の発展があり、人に敬(うやま)われ、名を揚げる事がある。さらに、以上の五相すべてを備える者は、大いに発展し、長寿を全うするか、天下にその名を発し、十方から重用される事がある。

9.発達無き相(発展しない相)を論ず

・眉、目、耳、鼻、口に悉(ことごと)く障りがあって、正しくない者は、決して発展しない。

・胴体(=体)が小さい者。

・頭が小さい者。

以上の二相も発展し難い。

10.勢いが強く、家業が十方に広まる相を論ず

・小鼻が怒り、顴骨が目の際より高い者。

・小鼻が怒り、法令線が広く、後面へ流れる者。

・顴骨が目の際より高く、法令線が後ろへ流れる者。

以上の内の一相がある者は、必ず勢いが強く、家業を十方に広め、名を天下に発する事がある。

・また、この相がある者は、必ず奴僕(ぬぼく、≒部下)を多く使っている。武家や長袖(=公家、神主、僧侶、医者、学者など)にある場合は、十方(=自分の周り)の人が臣下に等しい。

・以上の一相があって、眼に激しさがある者は、いよいよ勢いが強まって来る。

・眼が愚かな者は、勢いがあったとしても、愚蒙(ぐもう)であり、役に立たない。よく考えなさい。

11.才智愚暗の相を論ず

・耳が後ろへ引き上るように観える者。

・顴骨が眼の際より高く、後ろへ引き上るように観える者。

・眼に深みがあり、眼中が澄んでいる者。

以上の一相がある者は、必ず智がある。

・また、瞬(まばた)きが多い者は、才がある。俗に言う、目先が賢い者である。

・耳が清らかで正しく、天に向かう。また、顴骨が豊かで龍骨を現わし、眼が豊かで長く、黒白が分明で、ぼんやりしておらず、自ずと神(=神気)がある。

以上のような相がある場合は、必ず聡明の人である。また、この相があって、土星(=鼻)が天停(=額)へ貫く者は、必ず聡明で、天下に名を発する。だが、聡明で天下に名を発する相があったとしても、害骨(=腮、えら)が高く張っている者は、名を発するとは言っても、晩年は大凶である。この場合、人生が狂うのは、一万石以上の強勇の者である。
*「一万石以上の強勇の者」…つまりは「大名」の事である。江戸時代では、一万石以上を領有する領主の事を「大名」、と呼んだ。

・総じて、賢愚の相は、眼、口、耳、眉、顴骨にある。

・眼が愚かな者。

・眉が愚かな者。

・口に締りがない者。

・顴骨に勢いがない者。

・耳に勢いがない者。

以上の相が一つでもある者は、必ず愚才の相である。また、以上の相の部分が正しく満たされているように観える者は、必ず才がある、と判断する。

12.師匠となる相を論ず

・顴骨(=頬骨)が目の際より高く、耳の方へ通じる(≒張る)者は、必ず物の師範となる。

以上の一相がない者は、芸道に秀でたとしても、多くの門人を集める師になる事は出来ない。

・また、売人(=商人)で、この師骨(しこつ)がある者は、必ずその家業において優れている。

・また、志(こころざし)が高い者は、その家業を捨て、芸道に入る事がある。

・顴骨が低い者には、絶対に師徳はない。

13.運を開く相、開かない相を論ず

↑「運を開く相」

図のように頤(おとがい、あご)に筋が廻(まわ)っている者は、運を開く人である。また、筋が少しだけ廻っているように観える者は、その当時から少しずつ運を開く。さらに、筋が深く廻り、その筋に勢いがなく、頤の辺りが淋しく観える者は、一度運を開きながらも、その当時は衰退がある人である、と判断する。

14.運が強く、腎が厚く(=精力が強く)、長命(=長寿)な相を論ず

・鼻が長いように観え、かつ豊かで堅く観える者。

・歯が細くなく、程良く長い者。

・耳の肉付きが良く、耳が堅く観える者。

・鼻の下が豊かに観え、締りが良く、口を開いていない者。

・顔の皮が厚く、よく締まっているように観える者。

以上の内の一相がある者は、運気が強く、腎が厚く、長命である。また、内心は丈夫で、相応の福分がある。さらに、多少に関わらず、必ず奴僕(≒部下)を使う。

・鼻が豊かでなく、淋しく観え、鼻が長い者。

・鼻の下が豊かでなく、淋しく観え、鼻が長い者。

以上の相がある者はみな、運気が弱い(=運が悪い)が、長命である。貧賤で長命な者には、必ずこの一相がある。

15.腎気(≒精力)が弱く、短命の類を論ず

・鼻が和やかに観える者。

・鼻が短い者。

・鼻が小さい者。

・山根(さんこん、=目の間の鼻筋)が落入っている者。

・耳が和やかに観える者。

・耳が薄い者。

・眼がひどく出ている者。

・喉の骨(=喉仏)が無いように観える者。

・乱杭歯がある(=歯並びが悪い)者。

・常に、口中、歯肉の間に涎(よだれ)が溜まる者。

・常に、口が開いているようで、口の締りが悪い者。

以上の相が一つでもある者は、必ず腎気が薄く、短命の類である。

・根気が薄く、涙もろい者。

・思慮が浅く、苛々(いらいら)しやすい者。

・素直(すなお)な者。

・片親と早くに別れ、親との縁が薄い者。

以上の者は生涯、辛労が多い。

16.心が忙(せわ)しい相を論ず

・眉と眼の間が深く落入っている者。

・眼が落入っている者。

・目がひどく出ている者。

・目に激しさがある者。

・白目が青い者。

・瞼(まぶた)の開閉が多い者(≒瞬きが多い者)。

・眉と眼の間が狭い者。

・両眼の間が狭い者。

・顔一面がせせこましい者。

・顴骨(=頬骨)が高い者。

以上の内、一相でもある者は、万事において落ち着きがなく、苛々(いらいら)しやすい。これは元来、腎気が薄いがゆえである。よって、心気も薄く、短命である。また、根気が薄く、万事において急ぎ過ぎ、完遂し難い。

17.意識(こころ)を知る相を論ず

・鼻が堅く観える者は、堅意地(かたいじ、=片意地)な心がある。 

↑ギュッと閉じているのではなく、ゆったりと閉じている。

・無意識に手を差し出させた時、図のように親指を開かずに出す者は、必ず正直な心がある。
 
・鼻が和やかに観える者は、必ず素直な心がある。
 
・鼻が高い者は高慢であり(=気位が高い)、鼻が低い者は謙虚である(≒親しみやすい)。
 
・頭が後ろへ長い者は心が丈夫で、思慮深い。逆に、頭が後ろへ短い者は思慮が浅く、分別がない。
 
・耳が小さい者、口が小さい者は、共に心が小さい(≒小心者)。
 
・鼻が横に曲がる者は、人生に浮き沈みがある。侫(ねい)の心が深い(=心が「ねじけて」いる、偽善者)。
*原文では「倊イ深シ」と記されているが、正しくは「侫イ深シ」である。鼻は己自身、つまりは己の心そのものの表象であり、鼻が曲がっていると心にも曲がりがある、と観る。ゆえに、口先がうまく、邪(よこしま)な心を持つ侫奸(ねいかん)である、と判断するのである。
 
・害骨(=腮、えら)が高く張り出している者は、強情で、欲深い。
 
・黒眼が茶色い者は、強情で、欲深い。
*いわゆる「猿眼」である。
 
・準頭(せっとう、鼻先)が少しうつむく者は、出費する事を惜しむ(=守銭奴、ケチ)。
*人相術における標準的な鼻先は、正面から観た時、鼻の穴が観えるか観えないかくらいのものである。また、鼻はいわば金庫であり、鼻の穴は金銭の出入り口である。ゆえに、鼻先が垂れている者は、金銭の出入り口を塞(ふさ)いでいるに等しく、財布の「口」も堅い、と観る。逆に、鼻先が短く、正面から鼻の穴が開いて観える者は、金銭の出入りが激しい。いわば、宵越しの金を持たぬタイプである、と観る。
 
・両眉の間が特別に広い者は、生涯において、心に締りがない(=だらしがない)。両眼の間が特別に広い者も同様である。どちらも少し、愚である。
*眉間の標準的な広さは、自分の人差し指と中指2本分の幅である。眉間、眼間が広い者は、基本的には愚であると観るが、よく言えばおっとりした性格で、温厚かつ寛容、細かい事を気にしないタイプである。また、女性の眉間は、小人形法(人相術での一つの観方)においては股、陰部に該当するため、眉間が広い女性は常に股を開いているの表象であり、貞操観念に欠ける、と観る。しかし、常に、何よりも重要なのは眼であり、この場合においても、眼の相を加味した上で考察・判断しなければならない。
 
・眼球が定まらず頻繁に動く者は、情緒不安定で、迷いがある。
 
・瞳が大きな者は、その当時は心が定まっていない。必ず迷いがある。
 
・瞳が小さい者は、心に締りがあり、その当時は、家業は吉。
 
・男で女の姿に似た者は、心に器量(≒寛容さ)がない。大きく発展する事はない。
*長髪とか、女装しているとかではなく、女性に特有の相を備えている男性の事である。女性特有の相とは、『観面秘録』に記されている「陰小陽大」をベースにした観方の事である。つまり、女性は「陰大陽小(隠れている部分は大きく、露わな部分は小さい)」、男性は「陰小陽大(隠れている部分は小さく、露わな部分は大きい)」が自然に適っているゆえ、吉と観る観方である。例えば、女性は言動が控えめで、心身に適度な「丸み」があり、隠れている部分(胸・尻)が適度に大きいのが吉である。逆に男性は言動が溌剌としており、心身に適度な「四角さ」があり、隠れている部分(尻)が適度に小さいのが吉である。また、顔全体や眼、手などは陽(露わな部分)であり、女性はこれらが控えめで小さく、男性はこれらが溌剌として大きいのが良いのである。したがって、その姿に、以上のような女性の相を備える男性は、大きく発展する事がない、と言う。最近は、パッチリと大きい眼にあこがれる女子が多いが、眼が大きいのは本来は男性の相であるゆえ、凶である。特に、眼が大きすぎる女子は男子のような強烈な相を備える事になり、実社会つまりは仕事での発展は目覚ましいが、家庭に入ると男性と対峙しがちで、離婚を繰り返したり、後家となる。離婚を繰り返す相や後家の相はいくつもあるが、それらの相を多く備えるほど、凶となる確率が高まる、と観る。
 
・顴骨がないように観える者は、心に器量がない。また、人を使う事もない。生涯にわたって、発展しない。さらに、顴骨がないように観える上に、眼に愚相があるような者は、器量が全くない。世に言う、「埋もれ人(うずもれびと)」である。
*『南北相法』の中でも述べたが、江戸時代は男尊女卑の風潮が強かったため『相法早引』においても同様に、男性の相を中心に記されている。つまり、ここに記されている相はすべて、男性を観た場合の相である。ゆえに、女性を観た時は逆の意味になる事があるので、注意が必要である。先にも述べた通り、相の基本は「陰小陽大」であり、例えば、ここに記されている顴骨について言えば、顴骨の凸は、男性においては吉、女性おいては凶である。したがって、男性で顴骨が出ていない場合は、心に器量がない(≒軟弱な男である)、と言うのである。
*「埋もれ人」…現代的に解せば、不遇の傑士(=才能があるのに世に認められない人)である。しかし、ここでは真逆の意味で引用している。
 
・惣(そう)の人(=長、首長、頭)の器量の有無は、顴骨と眼を観て判断する。
 
・小鼻がないように観える者は、心に器量がない。人を使う事もなく、子供に縁が薄い。もし、子供がいたとしても役に立たない。
 
・短気だが柔和に観える者は、心が善悪に強い(≒情がある)。また、涙もろい。大体において、短気な者は心が善悪に強く(≒情があり)、人の面倒をみる事が多い。しかし、必ず怒りを爆発させる事がある。
 
・前歯の間が開いた者は根気が薄い。諸事において、飽きっぽい。だが、鼻が堅く観える者は考慮しない。

法令線が口に入る者は凶であると言うが、凶ではない。諸事において慎み、贅沢なものを口にせず、自ずと食を細くする。ゆえに、生涯、食に困る事はない。もし、食で贅沢をする者は、大いに困窮する。
*「法令線が口に入る」…古書においては、餓死の相とされる。南北翁は実地の経験から、異を唱えたのだと思われる。ちなみに、昭和期に名を馳せた多くの人相観はその著書において、餓死する相である、と記している。
 
・相者が目を大きく開けてジッと観た時、目を大きく開く者は、諸事・望み事が大きく、心が丈夫である。逆に、嫌がったように目を開きかねる者は、狭量(=心が狭い)で、物事に苦しむ。また、目は大きく開くものの、黒目が下に寄り付く者は、物事を人に明かさず、胸に包み隠す人である。

18.悋気(りんき、≒嫉妬心)が強い相を論ず

・顴骨(けんこつ、頬骨)が高く張りだしている者は、悋気が強い。

・また、この相は、肝気が強い人に多い。だが、色欲・情欲が弱い人については判断しない。

・発展し難い相である。

 


19.足る事を知る(≒感謝出来る、不平不満がない)相を論ず


↑倉庫(そこ)

・倉庫(そこ)の肉付きが良く、鼻と眉が豊かで長い者。

・鼻と眉が豊かで長く、下停は後面が広い。さらに、地閣が広く、肉付きに締まりがある者。

以上の二カ条は、何れも足る事を知る相である。衣食住は、大いに良い。

・鼻の下に髭(ひげ)がある者は、早々に足る事を知る。

↑羅漢眉

図のような羅漢眉を備える者は、早々に足る事を知る。また、仏縁がある。慈悲の心がある。もし、出家者にこの眉が備わっていなければ、出家を遂げる事が出来ない。

 


20.足る事を知らない相を論ず


・倉庫(そこ)の肉付きが悪い者。

・眉が黒々として、荒れている者。

・眼が深く落入っている者。

・眼が大きく突出している者。

・両眉の間が狭い者。

・喉の骨(=喉仏)が高く、尖っている者。

・鼻が小さいか、鼻先が尖っている者。

・鼻が短いか、小鼻がない者。

・耳が柔らかく、薄い者。

・頤(おとがい、あご)が細いか、長く尖っている者。

・鼻筋が落入っている者。

・手の肉付きが薄く、荒れている者。

・足が大きく、薄い者。

・頭が小さい者。

・胴体が小さい者。

以上の内、一相でもある者は、生涯、足る事を知らない(=感謝心がなく、不平不満が多い)。また、内に心労があり、思い悩む事が絶えない。もし、足る事を知れば、世を捨てるに等しい(≒僧侶や隠者として生きる)。福分に恵まれても、内心は貧相である。また、生涯、家庭が落ち着かない。

 

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