ぎっくり腰は主に小腰筋、大腰筋、多裂筋、腰方形筋、または腸骨筋の異常収縮(けいれん発作、弛緩が困難になった状態)や癒着によるものですから、頻繁にぎっくり腰を繰り返す、という人は、慢性的にそれらの筋肉が硬く、血流が滞っており、酸欠状態・過緊張状態ゆえ、ちょっとした刺激で筋肉の収縮に歯止めがかからなくなったり、筋膜や骨膜など同士の癒着が一定の範囲を超えると、ぎっくり腰と呼ばれる状態になるわけです。つまり、小腰筋・大腰筋が腰椎の前方に付着していますから、それらが異常収縮を起こして短くなると、背中をまっすぐにのばすことが困難になり、前かがみの姿勢しか維持出来なくなるのです。腸骨筋は腸骨稜から大腿骨小転子に付着していますが、腸骨へ腸骨筋が癒着したり、大腰筋と腸骨筋同士が癒着すると、同様に腰が曲がって伸ばせなくなります。当院では、確実にぎっくり腰を引き起こしている筋肉にアプローチしますので、介助されて来院したような患者であっても、治療後すぐに腰を伸ばして歩けるようになります。
ちなみに、毎年、ぎっくり腰を繰り返していた患者が当院の鍼治療を定期的に受けるようになると、口を揃えて「つばめ先生のところで治療を受けるようになってから、ぎっくり腰が全く起こらなくなりました!」と言います。毎年ぎっくり腰を繰り返す場合は、大腰筋だけでなく、腸骨筋が悪いケースが非常に多いので、腸骨筋への刺鍼は欠かせません。しかしながら、腸骨筋刺鍼は難易度が高く、的確に刺鍼できる鍼灸師は多くありません。また、腸骨筋に適合する針の長さは100~150mm程度ですが、日本では市販されていないため、中国で特注する必要があります。しかしながら、日本の多くの鍼灸師は中国語ができないと同時に、中国の針メーカーにコネクションがないため、針を入手することさえできないようです。針がなければ練習できませんから、腸骨筋刺鍼を習得することは難しいでしょう。当院は中国最大の針メーカーとコネクションがあるため、定期的に特注の針を仕入れることが可能です。
大体において、ぎっくり腰と言うのはヘルニアを発症する前の、慢性腰痛終盤期であることが多いですから、1回の治療で背を伸ばせるようになっても、1週間ごとに鍼灸治療を続け、ある程度筋肉が弛むまで様子をみなければなりません。そうしないと、またぎっくり腰を起こす可能性があるからです。腰痛が完全に無くなるまでの平均的な治療回数は、6~12回くらいです。当然ながら、筋肉の状態が悪く、日常的に筋肉にかかるストレスの度合いが大きければ、完治までは時間がかかりますし、軽ければ数回の治療で治ります。
整骨院などで毎週のように赤外線を腰部にあてている患者さんもいるようですが、問題の筋肉は皮下6センチ前後、身体のほぼ中央に位置するインナーマッスル(深部筋肉)ですので、いくら温めても患部まで熱は届きません。ちなみに中国で行われた実験では、一般的な灸の熱は皮下1cm程度までしか到達しないと言われています。
腰椎にかかる圧力は、腰椎に付着する筋肉が下へ引っ張り下げることによって起こりますから、当然ながら、筋肉の硬化が進めば、重力の法則を考えても明白なように、腰椎下部(腰椎4、5番)に最も負担がかかります。したがって、腰椎ヘルニアの好発部位が腰椎4、5番なのが理解するのは容易ですし、腰椎分離症が進行してすべり症になるのも容易に理解出来ると思います。医者は「椎間板の変性や椎間関節の変性に関連して起こる」などと言いますが、結局は腰椎に付着する筋肉に問題があるのです。あくまで、椎間板や椎間関節が変形するのは結果であり、まさに「木を観て森を観ず」です。これでは何年、何十年かけて治療しても、完治しないはずです。西洋医学はとかく部分に囚われがちですから、腰痛に関しても多くの病名を作り出します。
しかし、結局ほとんどの腰痛は、筋肉の硬化に起因しているのです。筋肉の硬化に起因しない腰痛は稀です。しっかりとした診断をせず、むやみやたらに神経を圧迫している脊椎の一部を切除したり、人工靱帯ですべりのある部分の脊椎間の動きを抑えたりするのは危険です。それは、部分だけに囚われた対症療法でしかありませんし、たとえ痛みが消えたとしても、完治したとは言えません。身体に障害を負わせるに等しい無駄な行為になりかねません。医療が飛躍的に進んだ現代でも、手術には危険が伴いますから、 出来るだけ手術しない方向で色々と検討するのが賢明です。私個人としては、現状で腰痛を完治させる事が出来るのは、長鍼を用いた鍼治療だけだと確信しています。
「腰椎椎間板性急性腰痛」と言うと難しく聞こえますが、実際は単なるぎっくり腰、つまりは小・大腰筋の痙攣によるものが大半です。医師は診断・検査をしても、原因が良くわからぬ腰痛にはこういった抽象的な、ややこしい病名を付けるものです。ぎっくり腰は何の治療を施さずにおいても、しばらく安静にしていれば回復します。しかし、ひどい場合は続発的に椎間板の損傷をきたしたり、髄核が脱出し、ヘルニアと呼ばれる状態になります。当然ながら、神経走行上、下肢へも痛みやしびれといった異常感が放散します。
腰椎に付着していて、大半の腰痛の原因となる小・大腰筋は、腰の奥深く(腰の皮膚表面から7cmくらい下)に存在するので、あん摩(マッサージ)をしたり、赤外線を当てたり、温泉に入ったり、お灸をすえたりするだけでは、完全にほぐしたり、弛めることは困難です。したがって、そこまで確実に到達する長さの鍼(いわゆる3インチ以上の長鍼)で治療しなければ、満足な効果を得ることはできないでしょう。
最後に、痛みは全てにおいて、脳が発する最終警告ですから、その原因を解明し、痛みの諸悪を一掃するのがベストです。つまり、痛みというものは、「それ以上動かさないで!」という身体のサイン(しるし、徴候)ですから、それを無視して無理に動いてしまったら、骨や靭帯にかかる負荷が増大し、骨や靭帯が破損、変形するなど、不可逆的な状態になる可能性もあります。一時的に、どうしても動かなければならない時、外せない用事がある時、緊急時などは致し方ありませんが、神経ブロックや鎮痛剤、コルセットをはじめとする補助装具などに依存してしまうようになったら、危険です。それらは痛みを感じさせなくさせる、いわば麻薬のようなものですから、身体を制限以上に動かすことが可能となり、最終的には身体が破壊され、脳が破壊され、廃人にならぬとも限りません。日常的に、出来るだけ早めに身体からのサインを読みとるようにして、その都度必要な対処をし、心身共に健やかな人生を送っていきたいものです。
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