疫学:発汗が全く見られない状態を無汗症、発汗が著しく減少した状態を乏汗症または減汗症とする。汗腺の機能的または器質的変化によると考えられる。全身性無汗症、局所性無汗症、先天性無汗症、後天性無汗症などがある。特発性後天性全身性無汗症は難病指定されている。日本国内の患者数は150人程度とされる。
原因:不明。アセチルコリン受容体の異常と考えられている。先天性無汗症の場合は汗腺自体が欠如していることがある。後天性無汗症は脳炎やマラリア、チフスなどの高熱性疾患、シェーグレン症候群、汎発性強皮症、アミロイドーシス、甲状腺機能低下症、間脳性視床下部疾患、多発神経炎、熱射病、脱水症、副交感神経遮断薬の服用などによって発症することがある。他にワクチンや食品添加物薬害説、電磁波障害説など。
注意点:発汗作用が失われるため、放熱が出来ず、皮膚が乾燥し、コリン性蕁麻疹を併発しやすい。また、高温下では熱中症を発症しやすく、脳に重篤な障害が出たり、死に至る危険性がある。
一般的な治療法:ステロイドパルス療法、ステロイド内服療法、免疫抑制剤などが行われているが、現状では根本的な解決に至っていない。
当院の治療法:現在まで、当院には10人ほどの後天性・全身性無汗症の患者が来院しました。元々の患者数自体が少ないことや、鍼灸が無汗に有効であるということ自体が認知されていないこともあり、来院数はそれほど多くありません。患者から聞き取り調査したところ、ほとんどの患者が無汗症専門を謳う某大学病院で治療を受けていたそうですが、全く改善が見られず、藁にも縋る気持ちで当院へ来院したそうです。当院では特に副交感神経遮断薬の服用によって無汗症が発症することに注目し、器質的異常が見られない無汗症の場合は、自律神経系の異常が原因にあるのではないかと推察しました。発汗は自律神経系によって調節されますが、自律神経節が存在する頸椎、脊椎、仙骨周囲の筋肉が持続的な精神的・肉体的ストレスや過緊張などによって慢性的に硬化し、神経根付近で神経が断続的に圧迫され、発汗障害が引き起こされているのではないかと考えました。そこで、頸部から仙骨まで、十分に刺鍼し、軸索反射や創傷治癒によって筋内の血流を改善させ、神経根の圧迫を取り除くような治療を施しました。結果、数人の患者は刺鍼時の痛みに耐えられなかったのか、2~3回施術した後、来院しなくなりました。残りの5~6人の患者は何とか痛みに耐えてもらい、週1~2回通院して頂きました。早い患者は5回ほどの施術で局所的に発汗が見られ、3か月ほどで全身の発汗を取り戻し、来院しなくなりました。この2~3人はその後来院していないので、経過は不明です。残りの2人の患者は6か月ほどの施術で完治し、腰痛などでたまに来院しますが、4~6年ほど経った今も無汗症は再発していないようです。来院した患者数は少ないですし、大学病院のようなデータをとることは出来ませんでしたが、治癒率は50%程度だと思われます。無汗症の患者はとにかく背中のコリが酷いので、刺鍼時に悲鳴を上げることが多いです。実際に、当院の刺鍼法は難病の概念を覆すほどの効果があるのは事実ですが、刺鍼時特有の響きや痛みを和らげることは難しいため、それに耐えられるかどうかが、完治までの1つの分岐点になります。また、週3日程度、苦しくならない程度ののウォーキングなど、軽い有酸素運動をすることで、全身の血流を改善し、症状を軽減させたり、予防することができます(熱中症などには気を付けて下さい)。さらに、ヨーグルトや納豆などの発酵食品を食べて腸内環境を整え、免疫機能の向上とホルモンバランスの改善を図りましょう。 食品添加物や農薬、薬害についてある程度自習しておき、それらはなるべく摂取しないこともかなり重要です。また、顎関節症の主な症状は、歯を強く食いしばることによる側頭筋の痛み、顎の痛み、開口時のクリック音、開口障害などですが、副次的な症状として手足の冷え、イライラ、不眠、自律神経失調などもよくみられます。ある病院での実験によれば、食いしばりや歯ぎしりが常態化した患者は、サーモグラフィ画像で全身の状態を観察すると、手足の体温が低下していることがよくあるそうです。これはつまり、食いしばりや歯ぎしりによって交感神経が優位になり、末梢血管が収縮したことに原因があると推察されますが、これらが常態化すれば、手足の毛細血管が減少したり、慢性的な血液循環不全が起こり、手足の冷えだけでなく、手足の肌荒れ、爪の異常、汗疱(異汗性湿疹、主婦湿疹)、感染(蜂窩織炎)、そして原因不明の全身の疼痛(線維筋痛症)、交感神経異常による全身の掻痒感やしびれ、発汗異常、睡眠障害、自律神経失調症などが起こりやすくなるようです。したがって、歯ぎしりや食いしばりが常態化した患者においては、以上のような症状は、薬物治療、局所的な治療、対症療法的な治療で完治することは難しく、顎の治療を最優先しない限り、進展がみられないことがよくあります。
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